ポジショントレードを考える_その2
さて、ポジション組成をする際に用いる、データについての話です。
具体的に言えば、ベータリスクをニュートラルにする方法について考えます。
このブログの読者の多くがそうだと思いますが、私はマーケットの方向を予測しません。
ポジションのベータ値を割り出し、それを相殺することで個別のアルファリスクへ賭けています。
アルファ、アルファと、言うのは簡単ですが、学術の世界では、こいつはほとんど「おばけ」のような扱いです。
アカデミックな場で言及される場合は、
「…以上の検証から、~アノマリーの存在を完全に否定することはできなかった。」
という具合に、腫れ物を扱うように慎重に論じられます。
それに対し、ベータというものは「学術的に言えば」非常に単純明快!
少し賢い小学生でも分かるような、単純な数式で表現することができます。
まずはそのベータ値を算出する式を確認してみましょう。
ベータ値の計算式を確認する
さて、まずはβ値の計算式を確認しましょう。
式はこれ
トヨタの対TOPIXベータ値
=(トヨタとTOPIXの変化率の共分散)/(TOPIXの変化率の分散)
です。
小学生には…さすがに少し難しいかもしれませんね。
これをすっかり数式にしてしまった方がイメージしやすいかもしれません。
トヨタの対TOPIXベータ値
=σxy/(σy)^2
(σxはトヨタの標準偏差、σyはTOPIXの標準偏差。)
金融商品の世界では、σ(1標準偏差)の値をリスクの基準としています。
それを踏まえて上記の式を見ると、「分子のトヨタのリスク(標準偏差)の大きさに注目しているのかな?」という感じがしませんか?
わたしが理系出身であれば、数式によってエレガントな証明ができるのでしょうが、読者に理数系のプロフェッショナルがいることを想定すると、余計なリスクは負いたくありません^ ^;
ここでは大事な要点だけ押さえておきましょう。
ベータ値とは、回帰直線の傾きのこと
ベータ値を解釈するうえで、私が最も腑に落ちた解説がこれです。
「ベータ値とは、回帰直線の傾き」であるということ。
これは、自分の手で確認するのがベストです。
まずはテキトーな銘柄で、先の計算式を用いてベータ値を算出してみましょう。
4523_エーザイ
2786_サッポロドラッグ
これが、それぞれの直近1年間のベータ値です。
エーザイはほぼ指数並み、サッポロドラッグは低ベータといえる水準ですね。
さて次に、それぞれの散布図を描写し、回帰直線を引きます。
手順は解説しなくとも大丈夫ですね?
4523_エーザイ
2786_サッポロドラッグ
それぞれのグラフに単回帰式を表示しているので、チェックしてください。
それぞれの回帰直線の傾きの値が、ベータ値と一致していますね(!)。
これを初めて学んだ時は、ちょっとした感動でした。
ベータ値の計算式を見ただけではイメージし辛かったと思いますが、これならベータ値の意味が腑に落ちるはずです。
ベータ値で分かること
念のため確認しておきます。
先の回帰直線とその傾き(ベータ値)から、以下のような関係が分かります。
直近1年間のデータから、
・TOPIXが1%上昇した日には、エーザイは1.13%程度上昇する傾向にある。
・TOPIXが1%下落した日には、サッポロドラッグは0.43%程度下落する傾向にある。
さらに、ベータ値によって分かるものと分からないものをまとめておきましょう。
<ベータ値から分かるもの>
・指数との相関方向(順相関か逆相関か)
・指数に対しての、おおよその変動幅(リスク量)
<ベータ値から分からないもの>
・相関の強度(決定力)
・入力したデータ外の市況変化があった場合の、個別リスクの変化
後にも書きますが、市況が急激に変化(暴騰暴落)した際には、ベータ値も急変するので注意が必要です。
株価の変化率から算出する数値ですので、当然といえば当然ですね。
以上で、ベータ値についての簡単な解説はお終いです。
これらのベータ値の特徴を踏まえて、肝心のポジション組成を考えていきましょう。
「おばけ(アルファ)」を見るための準備が、ここから始まります。
…続く
こんにちは!
記事冒頭の「データ」は「ベータ」の誤りかな。
とても興味のある新連載なので繰り返し読んでいたら気になってしまいました^^;
続編を心待ちにしています!
ご無沙汰です!
ぱでぃさんの暇つぶし程度にはなれるよう、必死で続きを書きますよ!
冒頭のは「データ」で間違いないのですが、確かに「ベータ」とした方が自然に感じてしまいますね笑
ぱでぃさんのブログも欠かさず読んでいますので、次回更新を楽しみにお待ちしています。
(今更ですが、「独立への布石」というタイトル、めちゃカッコいいですよね。)
こんばんは、示唆に富んだブログをいつもありがとうございます。非常に面白かったので自分でも手を動かしてβ値を出していました。
自分自身のポジションがどういった変動リスクを背負っていて、価格変動のどのような要因から収益を得るのかという事を見つめなおせる機会になりました。この続きも楽しみです。
>市況が急激に変化(暴騰暴落)した際には、ベータ値も急変するので注意が必要です。
miuraさんの仰るこの事をいつも気にしているので、ファーアウトのPUTオプションの買いはいつも組成するようにしています。
この時にβ値の事もしっかりと意識できると、さらに良いポートフォリオを組めるような気がするので明日から自分なりに考えてみます。
データマイニングの鬼軍曹様(笑)がお見えになる一席で、是非是非今年の顔合わせをしましょう!。
こんばんは!
1月相場、お疲れさまでした。
そうですね、自分の取っているリスクを定量的に測るものですから、私もアウトプットしながら知識と技術の再確認をしていこうと思います。
仲間内ではプットを組み込んでいる方が多いようですね。
資金効率と税制面での面倒臭さから、私はしばらく株(ETF)での運用を続けてみようと考えています。
今月の相場は、ある意味最高の勉強場だったので、次にお会いして意見交換する時が楽しみです!